みんないってしまう
「プラナリア」が気に入ったので、古本屋で山本文緒さんの作品を見つけては読んでいる。「ファースト・プライオリティー」は少し短過ぎるきらいがあったけれど、本作は 12 編の短編集ということで、内容はもちろんのこと、密度も展開も絶妙な頃合いでとても楽しく読めた。
| みんないってしまう (角川文庫) | |
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テーマは喪失。大人になると時間が速く流れ、気づかないうちに大切なものを失くしていく。いや、もしかしたら気づいているけれど、心のどこかで、気づかない振りをしているだけなのかも知れない。そんなことを考えさせられる 12 編の物語。
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時間が速く流れるのは、新鮮な出来事に出会っていないからだという。確かに周りを見渡してみても、多くの出来事は予定調和であるし、ハレとケという言い方をするならば、日常生活は正にケのオンパレード。誰もが、そうして日々暮らしているのだ。
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新鮮な出来事が少なくなったからだろうか。何かを失くすことが、とてつもなく大きな喪失として感じられる。子供の頃には、思いもしなかったことが悲しみとなる。別れのない所に出会いはない。では、喪失の向こうにあるものは何だろうか。
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標題作である「みんないってしまう」のラストシーンがとても印象的だった。「ひとつ失くすと、ひとつ貰える。そうやってまた毎日は回っていく。幸福も絶望も失っていき、やがて失くしたことすら忘れていく。ただ流されていく。思いもよらない美しい岸辺まで。」
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