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2008.07.06

短編小説「Love Song」

IMGP3988v100高校時代、僕はギター同好会に入っていた。ギターといってもクラシックギターではない。アコースティックギターを弾いて唄を歌うのだから、フォークソング同好会といった方が正しいのだが、同好会をつくった先輩が命名したのだから、こればかりは仕方がない。

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PENTAX *ist DS + smc PENTAX-DA 50-200mm F4-5.6 ED

入学後、入部手続きに行った教室で、「俺たちは今日で引退するから、後はよろしく」と先輩に言われ、途方にくれたことは今でも忘れられない思い出だ。

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小学生の時に習っていたピアノのおかげかどうかは分からないが、音痴ではない。でも、特別上手いという訳でもない。ギターだって程々にしか弾けない。もともとギターを始めたきっかけだって、中学時代の親友がギターを弾き初めてから、えらく女の子にモテるようになったのを見て。動機が不純なのだ。

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それが、どこでどう間違えたのか、部長になってしまった。部長というと、歌もギターも凄く上手い(それに加えて見た目も格好良い場合が多い)か、要領が良くて逃げ足だけは早い雑用係かのどちらかだ。僕が後者であったのは言うまでもない。

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ギター同好会には、卒業すると OB 会がある。夏になると OB と現役生とのジョイントコンサートが開かれるのが、毎年の恒例だ。部長をやっていたからだろう、大して上手くもないのに毎年声がかかる。いつも気を遣ってくれる後輩たちには、本当に感謝している。そんな訳で、今年も出演することになった。

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僕たちの学年が卒業してから、OB ジョイントコンサートも今年で 4 回目になる。つまり、僕たち 19 回生は、今年で大学を卒業する。コンサートに出演するのも、実質的に最後になる。一年ごとに OB は増えるし、OB として活動する世代も変わっていく。だから、この前、21 回生の後輩から電話があった時、何気なく

「今年で OB ジョイントに出るのは最後だなぁ」

と言ってみた。

「どうしてですか」
「19 回生はもう大学卒業だろ、就職したら忙しいし」

すると、彼は躊躇せずに言うのだった。

「あと 2 年あるじゃないですか先輩は。先輩二浪でしょ」

遠慮会釈もない奴め(笑)
確かに僕は 2 年間浪人した。
だから、あと 2 年はコンサートに出演できるのだけれど・・・。

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実は好きな人がいる。同じ 19 回生。彼女が入部してきた時、初めて逢った日から好きだった。優しい人だった。みんなに優しかったから、僕にも優しかった。それが辛かった。彼女には好きな人がいた。同じギター同好会、たぶん両想いだったのだと思う。"たぶん" というのは、自分がそう思っていたかったから。

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だから、卒業式で奴が彼女に白い封筒を手渡すのを見たとき、"たぶん" を捨てなければならなくて、涙が止まらなかった。彼女はこれまで、ずっと OB ジョイントコンサートに来ている。もちろん奴と一緒に。二人が並んで座っているのを見る度に、彼女のことは忘れようと思ってきた。けれども、今でも忘れられないのだった。

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僕は決心した。告白する。奴がいてもいい。そして、僕の片恋は終わる。ギター同好会と一緒に、想い出になるのだ。僕は初めてオリジナル曲を作った。最後のコンサートで歌う彼女へ贈る唄。それは 6 年間の時の流れだった。目を閉じると、制服姿の彼女がいた。初めてギターを弾く彼女がいた。弦が押さえられなくて、指が痛いと甘えてみせる彼女がいた。

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奴を気にして、奴の姿を目で追っている彼女がいた。引退コンサートで泣いている彼女がいた。卒業式で素敵な笑顔をみせてくれた彼女がいた。浪人が決まった僕に、「元気出してね」と絆創膏入りの手紙をくれた彼女がいた。ありがとう、君は僕の青春でした。必ず倖せになってください。

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コンサートの日、僕は最後のステージで、初めてオリジナル曲を歌った。

彼女は泣いていた。
僕も歌いながら、涙が頬を伝った。

彼女のとなりに、奴はいなかった。

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「Love Song」

ひとりのあなたは
誰を想う

ひとりの私に
何を語る

とてもとても
言えない

決して決して
「好きです…」

作詞 : 植田 洋一
作曲 : くげっこ

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