天声人誤:鍋の季節に
暮れも押し迫り、忘年会が街のあちらこちらで催されている。そのような席で食されるものといえば、まず鍋ものであろう。当編集部でも、編集長宅ですきやき鍋をつつく機会があった。
その席で、各編集諸子の生活文化の違いから来る思いがけない一面が改めて見られた。編集長を除くと皆、西日本の人間であったため、割りしたを使わない形でのすきやき鍋になったが、各家庭の味の違いにより、味付けに複雑な駆け引きが交錯することとなった。
全然味がしないからもっと辛くという N 氏、彼は普段甘いものに目がなく、彼のデスクの引き出しはお菓子で埋め尽くされているという噂がある。その N 氏が何故?と疑問に思われたが、これも酔っ払うと人格が変わるといった彼の二面性の一端が改めて確認されたのかもしれない。砂糖が足りないとカラメルでも作るかのごとく砂糖を鍋に入れる Y 氏、彼は日本の伝統的食生活を守って獣肉をほとんど口にしない家庭に育ったため、肉食に対する姿勢が特殊なのは仕方ないのかもしれない。
とはいえ、人々の和の象徴である鍋に個人のエゴを注ぎ込むようでは、我々編集部の将来も覚束ないものとなる。小誌は、大勢の圧力に屈服することなく、自由を勝ち取るために編纂されてきた。この活動を続けていくためには、もう一度、編集同志が中庸とは何かと見つめ直す必要性があるようだ。
1991 年 12 月吉日発行:菅谷日報より
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