短編小説「ラブソング」
高校時代、僕はギター部に入っていた。ギター部といっても、クラシックギターではない。アコースティックギターを弾いて唄を歌うという活動で、フォークソング部とでも言えば分かりやすいだろうか。小学生の時に習っていたピアノのおかげかどうかは分からないが、音痴ではない。でも、特別上手いという訳でもない。ギターだって程々にしか弾けない。もともとギターを始めたきっかけだって、中学時代の親友がギターを弾き初めてから、えらく女の子にモテるようになったのを見て。動機が不純なのだ。それが、どこでどう間違えたのか、部長になってしまった。大抵、部長というと、もの凄く上手いか雑用係かのどちらかだ。僕が後者であったのは言うまでもない。
ギター部には、卒業すると OB 会がある。夏に OB と現役生とのジョイントコンサートが開かれるのが、毎年の恒例だ。部長をやっていたからだろう、大して上手くもないのに、毎年声がかかる。今年も出演することになった。OB ジョイントコンサートも今年で 4 回目になる訳で、僕たち 19 回生は、今年で大学を卒業する。つまり、コンサートに出演するのも、実質的に最後になる。一年毎に OB は増えるし、OB として活動する世代も変わっていく。だから、この前 21 回生の後輩から電話があった時、何気なく
「今年で OB ジョイントに出るのは最後になりそうだよ」
と言ってみた。
「どうしてですか」
「19 回生は今年度で大学卒業だろ、就職したら忙しいし」
すると、彼は躊躇せずに言うのだった。
「あと 2 年あるじゃないですか先輩は。先輩二浪でしょ」
遠慮会釈もない奴め。確かに僕は 2 年間浪人した。だから、あと 2 年はコンサートに出演できるのだけれど・・・。
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実は、好きな人がいる。同じ 19 回生。入部して、初めて逢った日から好きだった。優しい人だった。みんなに優しかったから、僕にも優しかった。それが辛かった。彼女には好きな人がいたのだ。同じギター部、おそらく両想いだったのだと思う。"おそらく" というのは、自分がそう思っていたかったのだ。だから、卒業式で奴が白い封筒を手渡すのを見たとき、"おそらく" を捨てなければならなくて、涙が止まらなかった。彼女はこれまで 3 回、OB ジョイントに来ている、もちろん奴と一緒に。二人が並んで座っているのを見る度に、彼女のことは忘れようと思ってきた。けれども、今でも忘れられないのだった。
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僕は決心した。告白する。奴がいてもいい。そして、僕の片恋は終わる。ギター部と一緒に、想い出になるのだ。僕は初めて曲を作った。最後のコンサートで歌う彼女へ贈る唄。それは 6 年間の時の流れだった。目を閉じると、高校生の彼女がいた。初めてギターを弾く彼女がいた。弦を押さえる指が痛いと、甘えてみせる彼女がいた。奴を気にして、目で追っている彼女がいた。引退コンサートで泣いている彼女がいた。卒業式で素敵な笑顔をみせた彼女がいた。浪人が決まった僕に、「元気出してね」と手紙をくれた彼女がいた。ありがとう、君は僕の青春でした。必ず幸せになってください。
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コンサートの日、僕は最後のステージで、初めてオリジナル曲を歌った。
彼女は泣いていた。
僕も歌いながら、涙が頬を伝った。
彼女のとなりに、奴はいなかった。
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コメント
これって実話?フィクション?「小説」ってあるからフィクションですよね。いやひょっとして僕の知らないところでこんなドラマがあったのかとか思った次第です。
僕の好きだった1学年上の女性はその後民放の朝のニュースでお天気お姉さんをやったりNHK教育テレビのアシスタントをやったりしていて拝見できましたが、結婚したのかここ10年くらいは見ていません。
ここのブログで自分の若い頃をいろいろ思い出します…。
投稿: 鵠っ子 | 2005.03.22 17:04
♪鵠っ子さん
残念ながらフィクションですよ。
ご存知の通り、浮いた話、無かったですよね〜。
まあ、高校時代だけじゃなくて、その前もその後もですけど(苦笑)
これは、昔、OB ジョイントコンサートのバンフレットに
寄せたものでした。当時良く歌っていた「LOVE TOKEN」や
「Love Song」のライナーノート代わりに掲載してもらった
記憶があります。あの時も、実話かフィクションかという
話題を提供したような・・・。
閑話休題(それはさておき)、浮いた話は無かったけれど、
想いのままにギターを弾いて歌っていた、そんな輝ける時代
だったことは確かですね。このブログ、駄文ばかりで申し訳ない
と思っていましたが、青春時代を思い出すきっかけになった
のだとすれば、少しは存在価値もあったのかな(笑)
投稿: 現代音協楽 | 2005.03.22 18:43